2017/04/16 ライトノベル講評① ー魔術学園領域の拳王ー
■それは、とある新人王戦の集合時刻2時間前……
友「最近本読んでねーわ」
僕「だったら、俺がおススメしてやんよ」
友「あ? やんのか、コラ」
僕「受けて立とう」
ざっくり会話を要約すると、こんな感じのやり取りが、
僕と友人の間で行われました。
もう少し分かりやすいようにかみ砕くと――
「お互いに本を一冊ずつ買い与え合って、そのレビュー・感想をお互いブログに載せよう」
という企画。
という訳で、友人が僕に買ってくれたのは、タイトルにもなっている、
魔術学園領域の拳王 -黒焔姫秘約-
ファンタジア文庫から刊行されている、下等妙人先生著作のライトノベルです。
イラストは瑠奈璃亜先生。第29回ファンタジア大賞で銀賞を受賞した作品ですね。
(ファンタジア文庫公式HPより引用)
さて、いかにも「ライトノベル」というようなタイトルと表紙。特に、拳王と書いて「バーサーカー」と読ませるところなど、胸が躍ります。
まずはキャラクタ紹介から。
表紙後部の銀髪の少年が、主人公の立華紫閻(たちばなしあん)。もともとから黒髪だったのですが、ストーリーの進行と共に銀髪(白髪)に。
手前の少女は、メインヒロイン①の黒鋼焔(くろがねほむら)。黒鋼流という流派の武術の使い手で、紫閻にそれを伝授します。
その他にも、関西弁の幼馴染(ただし男)や、刀使いのライバル(ただし男)、トリガーハッピーな金髪高飛車系同級生など、様々な魅力あるキャラクターが登場します。
コンセプトは、いわゆる異能学園バトルもの。が、作品中の歴史が少々重めに設定されていて、1巻を読んだ時点で、その後の展開や伏線回収が楽しみな内容になっています。
続いてストーリー紹介。主人公の生い立ちと、この世界の歴史が関係しているので、そちらも軽く触れておきます。
物語開始の二百年前、人類世界に上位存在が君臨する。そして彼の登場と共に、人類に異能が授けられ、彼らは魔術師と呼ばれるに至る。
それから140年間、人類と上位存在による戦争――邪神大戦が続いた。
その終結から60年後が、物語の舞台。
主人公は幼い頃に、上位存在残党のテロ行為に巻き込まれかけるが、魔術師により救出される。以降、魔術師という存在に憧れ、魔術師養成学校「龍帝学園」に入学する。
魔術師は戦闘において、魔晄外装と呼ばれる武具を顕現させ、多くはリーチや突破力に優れた長物を所持するのだが、主人公の外装は、拳から肩までを覆う装具。打撃力をわずかに向上させるばかりのそれは、いわゆる落ちこぼれ。入学早々、模擬戦に破れ、教官からさえも退学勧告をされてしまう。……
失意のどん底の中、紫閻は黒鋼焔と出会う。焔は紫閻の中にある資質を見抜き、彼を狂戦士へと変貌させていく。
と、まぁ、物語の冒頭はこんな具合。
これはメタ的な視点になるかもしれませんが、物語導入部分は、どうしてもある程度型にハマってしまう部分があります。この作品においては、そのような「読者にとってはもうお約束事」は詳しく書かず、物語中核部分に力を注いでいるような印象を受けました。
ここからは素直な感想。
落ちこぼれって言ったって、どうせすぐに立ち直って、並み居る敵をバッタバッタってパターンなんだろ? と思いきや、思いのほか主人公が失望・落胆する描写がえげつない。クラスメイトや教官からここまでボロクソに言われる主人公が、これまでに存在しただろうか? と思うくらい。
そして、物語中盤くらいから登場する、黒鋼焔の祖父がとんでもなく愉快なキャラ。ネットスラングを連発し、しかも、他人の会話は遮って喋るわ、やりたい放題。そのくせ、同じことをされると憤慨するという……。
個人的には、ライトノベル、というよりも、地の分・台詞、ともにエロゲっぽい印象。キャラクターたちが縦横無尽に動き回る様は、ぜひ立ち絵・SE付きで見てみたいところ。
あまり書きすぎるのもネタバレになりかねないので、短いですが以上。
2巻、3巻、とどうなるのか、先行き楽しみです。